子育てを始めてわかった、AIコーディングの限界と「指示待ち」じゃないIT人材の価値
はじめに

「AIがあれば、もう人はいらないんじゃないか?」
そんな声を聞くことが増えた昨今。ChatGPTやGitHub CopilotのようなAIツールが登場し、コードを書くスピードは飛躍的に向上しました。私自身も、子育てを始めてからというもの、限られた時間の中で開発を進めるためにAIコーディングを積極的に活用しています。
しかし、子育てと仕事を両立する中で、ある日ふと気づいたのです。「AIは、指示がなければ動かない」という、当たり前だけど見落としがちな事実に。
AIは“指示があってこそ”動く存在
AIコーディングは確かに便利です。例えば、Reactのコンポーネントを作るとき、ちょっとしたUIのコードを自動生成してくれたり、正規表現のパターンを一瞬で出してくれたり。これまで30分かかっていた作業が、5分で終わることもあります。
ただし、それは「自分がPCの前に座って、何を作るかを決めて、AIに指示を出す」という前提があってこそ。
目の前に新生児。新生児のお世話は3時間タイマー。私はPCの前に座ることすらできないまま一日が過ぎました。当然、AIも動きません。なぜなら、AIは「指示がないと動けない」からです。
「指示を出せる人」がいなければ、AIは止まる
この経験から、私は改めて気づきました。AIがどれだけ優秀でも、それを動かす「人」がいなければ、何も始まらないということに。
これは、チーム開発にも通じます。たとえば、あるプロジェクトでリードエンジニアが体調を崩してしまったとします。彼がいなければ、誰が方向性を決め、誰が優先順位をつけ、誰が次の一手を考えるのでしょうか?
AIは、そこまでやってくれません。AIは「こういうコードを書いて」と言われれば書きますが、「今、何をすべきか」を考えることはできません。
「指示待ち」じゃない人材こそ、AI時代のキーパーソン
このような状況で求められるのは、「指示がなくても動ける人材」です。
たとえば、リードやマネージャーが会議に追われて手が回らないとき。「この仕様、ちょっと曖昧だけど、こういう意図だと思うので、こう進めてみました」と提案し、実行できる人。そんな人がチームに一人いるだけで、プロジェクトは止まりません。
実際、私のチームにもそんな若手がいます。ある日、私が子どもの通院でSlackを見られなかったとき、彼は「このAPIの仕様、ドキュメントが古いので、実際のレスポンスを確認して修正案を出しました」と報告してくれました。しかも、Pull Requestまで出してくれていたのです。
そのとき私は、「ああ、AIにはできないことを、彼はやってくれている」と心から思いました。
ただし、「提案力」には前提がある
もちろん、「提案できる」だけでは不十分です。提案の内容が的外れであれば、かえって手戻りが増え、チームの負担になります。
たとえば、業務システムの開発で「この画面、もっとポップなデザインにしましょう!」という提案があったとしても、それがユーザーの業務効率を下げるものであれば意味がありません。
つまり、提案には「ビジネスの理解」と「ITの専門知識」が必要です。これは一朝一夕で身につくものではありません。
若手の“明後日の提案”を、根気強く育てる
とはいえ、若手にいきなり深い知識を求めるのは酷です。むしろ、「明後日の方向でもいいから、まずは提案してみる」ことが大切だと思います。
そして、リードやマネージャーは、その提案を頭ごなしに否定するのではなく、「なぜその提案がズレているのか」「どう考えればよかったのか」を丁寧に伝える必要があります。
私自身、子育てを通じて「待つこと」「教えること」の大切さを学びました。子どもが靴を左右逆に履いても、すぐに直すのではなく、「どうしてそうなったのか」を一緒に考える。これは、若手育成にも通じる姿勢だと思います。
まとめ:AI時代に求められるのは「考えて動ける人」
AIは、確かに強力なツールです。しかし、それを活かすも殺すも「人」次第。
- 指示がなければ動けないAI
- 指示がなくても動ける人
この違いが、これからのIT人材の価値を決めるのではないでしょうか。
子育てを通じて、私は「自分が動けないときに、誰が動いてくれるか」という視点を持つようになりました。そして、AIにできないことを担える人材の重要性を、身をもって実感しています。
AIに押し出されないために必要なのは、「考えて、提案して、動ける力」。そして、それを育てるための「根気と対話」なのだと思います。